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N BOX Camper 開発レポート 第四話「燻銀」
2015年2月12日
わたくし“kaihatu”がクレーモデル(粘土成形)とであったのは、芸大を卒業してまだ間も無い時期だった。芸大に在籍していたものの所詮一般人、クレーが何たるか、またどこに行けば目の当たりに出来るかすら良く分からなかった。
芸大を卒業したわたくしは、あるデザイン&モデル制作会社に籍を置いていた。
そこでは車両にまつわる様々なデザインが行われていた。そして、随時クライアントにプレゼンテーションされ、採用されたデザインはマスターモデルの制作に取り掛かる。
マスターモデルとは、いわゆる原型を意味し2次元のデザインを実寸で作り上げる言わば一つだけのオリジナル商品だ。さらに同デザインを量産する為、通常はそのマスターモデルから反転型を作成する。ここで言う反転型とは。石膏型、粘土型、FRP型などが一般的で、大量(何万個)に製品を作る場合は金型となるケースが多い。
また、マスターモデルの素材も様々だ。最近ではNCと呼ばれる機械で3次元データを自動的に削り出す事も容易に出来る様になったが、今回のN BOXなどは車両トータルデザインを優先する為、実車に載せて成形。つまり、ウレタン成形かクレー成形に絞られる。今回はデザイン上、クレー成形がベストと判断し、一部紹介させて頂く。
※ここでの開発風景は企業秘密が多い為、一気にクレーモデル最終段階まで飛ぶがお許し頂きたい。
(嘘みたいな話なんですが、同業他社さんもこの「開発レポート」を良く見ている様です。ご興味ある方には、大変申し訳ないのですがごっそり飛ばさせて頂きます。本当にすいません。)
では1枚目をパチリ。
なんてシャープで美しいラインなんでしょう。恥ずかしながら自画自賛?!
これが粘土で出来ているなんて初めて見る方には不思議に思えるのでは?
実は、この技術がすごいんです。正に神業。こればっかりはわたくし“kaihatu”にも真似できません。日本にごくわずか存在するクレー成形技術を会得した『神の手』達に託します。これぞ燻銀。
※燻銀とは…目立つ事無く華やかではないが、実力を持ち魅力を有するもの。だそうです。
「えっ、どうして角が尖っているのかって?」
鋭いご質問有難う御座います。世の中の全ての製品(丸っこいデザインの物も含めて)は、面と面の組み合わせで構成されています。そしてその多面体の角を最終的に削って一つの塊(製品)になるのです。角を小さなアール(曲面)を取れば角ばったデザインに、反対に大きなアール(曲面)を取れば丸っこいデザインとなります。
最初から丸みを付けてしまっては、元々どのようなデザイン(面の構成体)であったか分からなくなってしまいますし、修正しようとしても何を基準に形を変更するのかすら分からなくなるからです。
つ・ま・り、アール(曲面)を取る前の面構成の時点で、全ての善し悪しが全て決まると言う事です。美しいデザインも醜いデザインもこの時点が勝負です。
と、うんちくを語りながら、アール(曲面)を取った写真をパチリ!
車両半分だけ削りました。角を削った分、ルーフが薄く(細く)見えると思います。
角が無くなった為、人の目線からは高さが低くなった様に見えるのです。もちろん実際に高さは変わっていません。
これら視覚的錯覚は、デザイン上良く使われる技法です。反対に、この様な理論を理解していなければ、美しいボデーラインを生み出す事が出来ません。(ちなみにフロント部の黄色テープは、ルーフ開口部の見切りイメージです)
さらにボデー全体をパチリ!
全体フォルムもGOODです! クレーとボデー色が違う為、車両アウトラインがイメージしにくいかと思いますが、我々ホワイトハウスはポップアップ開発を車両全体のデザインとして捉え、最終決定していきます。
この時点で、ほぼすべてのデザインは終わります。
後は地道な作業が深夜まで続くのです…。
by“kaihatu”